2023/10/02
リフォームやリノベーションの優先順位は、目に見えるデザイン部分が優先され、耐震のことは後回しにされがちです。しかし、目に見えない構造部分の改修は、家族の身を安全確保はもちろん、住みやすさの向上にも大きなメリットがあるんです。
今回は、リノベーションの前に知っておくべき“耐震”にまつわる基礎知識を紹介しましょう。
はじめに、リノベーション工事の際に耐震構造も見直すべき理由をいくつかご紹介します。
現行の耐震基準を満たしている住宅がどれくらいあるかご存知ですか。
2006年から2021年の間に耐震診断を行った全国およそ2万8000棟のうち、大地震でも倒壊しないだろうと判断された住宅は、わずか10%です。
全体の3/4は「倒壊する可能性が高い」と判断されています。
つまり、リノベーションの対象になる中古住宅の大半は、安心して住める耐震基準を満たしていません。
「日本国内で、地震が発生しないところも、大きな地震が今後も絶対に起きないところも、ない」これは、気象庁が発表している言葉です。
日本ではマグニチュード 3以上の地震が、毎月400回以上起きており、国内の活断層の数は約2000とされています。文字通り地震の脅威と隣り合わせて暮らしている日本で、大半の住宅が地震の備えが不十分であるのは、驚きですよね。
さらに、地震の際、耐震性能の低い住宅は地域の被害を拡大させる可能性も。
・倒壊して隣の家を壊す
・倒壊した家で道路がふさがれ、救助ができない
・津波が起きても避難場所までたどり着けない
「自分の家だから大丈夫」ではなく、地域防災の視点で安全を考えることが大切です。
もちろん、耐震改修で得られる恩恵は、地震から身を守れることだけではありません。
中古住宅を適切にチェックして耐震改修を行うことで、下記のようなメリットがあります。
・建物を長寿命化させられる
・建築当時の問題点を改善し、現在のニーズに合わせた設計にできる
・取り払える壁がわかり、空間を広くできる
・窓を大きくして、光や風をたくさん取り込めるようになる
見えない部分を改修することで、目に見える空間も広げられ、住みやすさを向上できます。
耐震診断とは、建物が地震の揺れにより倒壊するかしないかを判断するための調査方法です。
木造住宅の耐震診断は、財団法人日本建築防災協会による「木造住宅の耐震診断と補強方法」が広く利用されています。プロによる耐震診断では、このような公的機関の設定基準を元に、建物の上部構造評点を計算します。
上部構造評点の数値によって、大地震の揺れに対してどのくらい倒壊の可能性があるかを判断します。
図:上部構造評点と倒壊の可能性
財団法人日本建築防災協会では、「誰でもできるわが家の耐震診断」という一般向けのリーフレットも発行されています。
耐震診断を、プロに相談する前に自分でトライできるものです。
改修工事前にプロがしっかりチェックするのは大前提ですが、色々な方法があると知っておくと心強いですよね。
参考: 財団法人日本建築防災協会「耐震支援ポータルサイト」
参考: 財団法人日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」
続いて、安全性を確認する基準についてお話しします。
「耐震等級」と「耐震基準」は、リノベーションを調べ始めるとよく目にするワードですが、ややこしいですよね。
どちらも、中古住宅の安全性を確認するためのものです。
まず、「耐震等級」とは、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で設定された、一般の方にもわかりやすい耐震性能基準です。
1から3まで3段階あり、数字が大きいほど強い構造と判断できます。
耐震等級1※ |
数百年に一度程度の地震に対しても倒壊や崩壊しない性能 |
耐震等級2 |
耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる性能 |
耐震等級3 |
耐震等級1の1.5倍の地震に耐えられる性能 |
※現行の建築基準法で定められている性能を満たす建物
なお、“数百年に一度程度の地震”とは、震度6強から7程度、阪神・淡路大震災や熊本地震程度の地震を想定しています。
耐震等級1の建物では、こうした大地震でも倒壊は免れる可能性が高いです。ただし、一部損傷を負う可能性は否定できません。現に、2016年の熊本地震では、現行の耐震基準を満たしている耐震等級1の建物でも被害が報告されています。
建物の一部でも損傷被害があれば、補修にもお金がかかりますし、繰り返し余震に耐えられるかも不安になってしまいますよね。
耐震等級3では、建物の損壊も免れ、一部損傷の可能性も低くなります。
耐震診断では、上部構造評点が1.0以上が耐震等級1程度、1.5以上が耐震等級3と判断します。
適切な耐震リノベーションをするのであれば、倒壊から人命を守れるうえに一部損壊も最小限になる上部構造評点1.5以上=耐震等級3を目指すことをおすすめしています。
品確法に基づく「耐震等級」に対し、建築基準法による基準が「耐震基準」です。
建築基準法は、これまでに2度、大きな改訂がされています。
そのため、どの時期に建てられたかにより「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準(現行耐震基準)」のうちのどの基準を満たしているかが分かります。
旧耐震基準 |
1950年施行の基準。現在では耐震診断を受けることが義務となっている。 |
新耐震基準 |
1981年施行基準。木造住宅の必要壁量が強化された。 |
2000年基準 |
現行基準。基礎、接合部、耐震壁の配置バランスなどが強化された。 |
中古住宅のリフォーム・リノベーションを考えるときは、まず建築時期を確認し、上記の耐震基準1以上を目指すことが、いつ起こるかわからない地震に対する備えとなります。
耐震リノベーションの重要性は理解できるものの、費用を心配する方もいるでしょう。
もちろん、耐震改修をする分の費用は必要ですが、活用できる補助金などの制度もあります。
最も大きな制度である「長期優良住宅化リフォーム推進事業」をご紹介します。
長期優良住宅とは、耐震性能や断熱性能で一定水準を満たした住宅を認定する制度で、国のさまざまなサポートが受けられます。
耐震性能では、前述の耐震等級2以上の建物が対象です。
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、国土交通省が管轄している補助金制度です。
近年は毎年公募されており、年度毎に基準や補助額は更新されますが、令和5年度では1戸あたり最大250万円が補助されています。
■令和5年度 概要
評価基準型 |
100万円/戸 |
長期優良住宅を取得しないものの、一定の性能向上が認められる場合。 |
認定長期優良住宅型 |
200万円/戸 |
長期優良住宅認定を取得する場合 |
※()内は以下に該当する場合
・三世代同居対応改修工事を実施する
・若者、子育て世帯が改修工事を実施する
・既存住宅の購入者が改修工事を実施する
・一次エネルギー消費量を省エネ基準費▲20%とする
参考:国土交通省 「長期優良住宅化リフォーム推進事業」
※予算枠の状況により年度中でも補助が受け取れない場合があります。
※次年度は内容が変更する場合もあります。
長期優良住宅化リフォーム推進事業の他にも、「耐震リフォーム減税」と呼ばれる所得税の控除制度や、地域自治体からの助成金などを活用できる場合があります。
安心して快適に住むための性能向上リノベーションを、ぜひ前向きに考えてくださいね。
今回は、耐震リノベーションの基礎知識として、重要性やわかりにくい用語などを中心にお伝えしました。
いつ地震が起こるかわからない日本の環境下では、耐震改修は中古住宅リノベーションの大きな課題です。
地震がおきてもご家族が笑顔で住み続けられる家になるよう、全力でサポートします。
トウケンホームは、リノベーションで安心・快適な暮らしを叶えてもらえるよう「性能向上リノベの会」に加盟しています。
性能向上リノベの会が定めた仕組みと基準に基づいたリノベーションを行い、安心・安全な家をご提供しています。
「性能向上リノベーション」とは、中古住宅における間取りの変更などに加え、断熱性能と耐震性能の向上を伴う改修を行うリノベーションです。
参考:性能向上リノベの会
ご家族が快適に過ごせるリノベーションをご検討の際は、私たちトウケンホームに、お気軽にご相談ください。